4月 21, 2019

「海浜くらしの研究所」Vol.25 春風亭一之輔さん(前編)

Vol.24 春風亭一之輔さん_img01

高2で初めて入った寄席を「何か楽しいところだな」と思って、見よう見まねで落語ができた体験が、プロになるきっかけだった。
「海浜くらしの研究所」Vol.25 春風亭一之輔さん


さまざまなジャンルで活躍するライフデザインの達人たちを迎えて、どんなくらしが自分を楽しく、豊かにしてくれるのかを研究する「海浜くらしの研究所」。その第25回目、最後のゲストは、いま最もチケットが取れない落語家の一人と言われる春風亭一之輔さん。今日は一之輔さんに、落語との出合いや寄席の楽しさなどをお話しいただきました。



みんなで一つの番組を作る寄席

(年間の高座は900以上を数えますが)1日何回もやってますね、結構ね。落語だと6席くらいしゃべることもある。1日で3か所くらい回ったりして場所も変わるんで、違うことをしゃべる。自分も飽きちゃうんでね。 (二人は独演会のチケットが取れなくて寄席で観ましたが)すいません、言っていただければいくらでも(チケットは)用意するんですよ。

寄席はいろんな人が出るんで、20組くらい出ますかね芸人がね。みんなで一つの番組を作るって感じの、それを楽しむところ。交代、交代して、(次々に)芸人が出て来るとだんだん客席が一つになってきてテンションが上がってって最後は爆笑で終わる、そんな流れが寄席にはあって。(出演者は)紙切り、とか漫才、あと曲芸、太神楽(だいかぐら)って、傘の上で升回したり毬回したりするでしょ。あとマジックね。

そういう芸の人を寄席の世界では「色物(いろもの)」って言うんですよ。なぜかというと、(寄席の)看板で、落語家の字は黒い墨で書いてあるんですが、色物さんは朱(色)の墨で書いてある。それから色物って単語ができたんです。独演会の方は、一人の人間がずっとしゃべるんで、一人を観にいくところ、ですね。


お客さんの方が面白い?!

Vol.24 春風亭一之輔さん_img01

(落語との出合いは)高校2年の春にラグビー部をやめたんですよ。それで時間がすごく余っちゃって、土曜の午後とかやることなくなっちゃって、浅草うろついてたら、浅草演芸ホールにふらっと入っちゃったんですよ。
そこで、ぽつんと一人で観てたら、寄席ってね、お客さんが一生懸命聴いてないんですよね。すっごいざわついてるっていうか、集中してないでしょ、あんまり。初めて入ったときも、おじいさんおばあさんがざわついて、飴を配ったりしてる。幕が開いたのに、もう寝てる人とかいる。おかしいじゃないですか、お金払って観に来てるくせに、幕が開いて寝てるんですよ。なんだ、このゆるい空間は、と思って。芸人も観るけど、お客さんを眺めてると「何か楽しいところだな、面白いなぁ。こういう空間って他にないな」と感じました。



最初からしっくりきた落語

(落語を始めたきっかけは)落研って落語研究会の部室だけ(高校に)あった。いまは(部員が)誰もいないというので、先生に「ちょっと落語に興味もったんで、やってもいいですか」って言ったら、部室のカギをくれて。入ってみたら、先輩が残していった本や(当時の)落語のカセットテープとかがいっぱいあって。それを聴いて覚えてやってみたんですよ。そしたらね、何かできた。教えてくれる人はいないけど、何となく寄席で観て、右向いて左向いたりしてやるんだなぁ、って見よう見まねでね。落語って、歌とか運動に近いですね、リズム感とかテンポとか、すごく大事なんで。(それが当時)できてはいないんだけど、自分に何かしっくりくる、やってて何か楽しくて、芸の形態が自分に合ってるのかなって。それで「ああ、落語やろう」と思ったんです。

実は小学校のときにね、落語クラブってのがあったんですよ。だから人前で初めて落語をやったのは(小学校の)体育館の「卒業生を送る会」で、大きい学校だったのでお客さんは全校生徒1200人くらいでした。

それから高2で初めて寄席に入るまでいっさい落語は忘れていて、興味もなくなってた。やることがなくて何かねぇかなって探しているとき(寄席を知りましたが)、やっぱりそういう時間があるってのは大事ですね。



人前で噺をするのも稽古

Vol.23 ジョージさん_img03

(落語でお決まりのアイテムは)着物、扇子、手ぬぐい、それだけでできちゃうんですけど、なかには腰に(薬入れなどに使われた)印籠をぶらさげてる人もいますね。(落語の稽古は)一対一でやるんですよ。この落語を習いたいと思った師匠に「教えてください」ってお願いする。そうしたら「分かった、いついっか(何日の何時に)やろう」って、お宅に伺って一対一で一つの落語を通して全部やってくれる。昔は“三べん稽古”って言って三日間通うんです。で、一日一回やってくれて、四日目に自分がやる、一人で録音もせずに(覚えて)。最初は教わったものをそのまんまコピーですよ、完全に再現するっていう作業ですね。で、一つの噺をもう何十回何百回やっていくと、だんだんだんだん「自分はこの間だな」っていうのが分かってくる。だから人前で稽古なんですよね、本番なんだけどお稽古。同じ落語を同じようにやっても、お客さんが毎回違うし、天候とか昼夜の差もあって、昼のお客さんの方が笑うんですよ。何でか分からないけど。夜のお客さんは、しっとりおとなしめに聴く、鑑賞するっていう方が多いですね。



「師いわく」という人生相談

Vol.23 ジョージさん_img03

(今年の2月に新刊『師いわく』が出版されましたが)人生相談の書籍化でございまして、僕と聞き手でカメラマンさんのキッチンミノルさんて人がいて。この人、僕が真打になった8年くらい前から、ずっと(僕を)追っかけて写真撮ってる人なんですけど、おしゃべりもけっこう面白い人なんで、二人で人生相談を募ってですね、たいてい居酒屋でしゃべってるんすよ。だいたい酔っぱらってやってますから、ラクな商売でしょ。

Vol.23 ジョージさん_img03

麻耶:
(書籍を読んで)すごく共感できるものが多くて。例えば「不愉快な相手こそ格好のパートナー」と。

ジョージ:
おい。おい、おい、おい(むせる)。

一之輔:
これは本当にむせてますよ、効いてますよこれ(笑)

麻耶:
だからパートナーとして、いいってことですよ。

一之輔:
それ、僕が言った金言ですね。

Vol.23 ジョージさん_img03

ジョージ:
ありがとよ!(笑)