4月 14, 2019

「海浜くらしの研究所」Vol.24 石原和幸さん(後編)

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東日本大震災後にエリザベス女王から掛けられた一言。それが、羽田空港第1ターミナルの永久展示の庭園につながった。

「海浜くらしの研究所」Vol.24 石原和幸さん


さまざまなジャンルで活躍するライフデザインの達人たちを迎えて、どんなくらしが自分を楽しく、豊かにしてくれるのかを研究する「海浜くらしの研究所」。その第24回目のゲストは、国内外で活躍される庭園デザイナーの石原和幸さん。今日は石原さんに、これまで造られた庭のお話に盆栽のアドバイスもいただきました。



羽田空港に造られた石原和幸

(これまでの庭で印象に残るのは)2011年にチェルシー(国際ガーデニングショーの最高峰『英国チェルシーフラワーショー』)で庭を造ったんですが、造る前に東日本大震災が起きまして、チェルシーに出場するかどうか迷ったんです。だけど僕は、東北の風景は本当はきれいなんだ、と世界に知らせたくてロンドンで庭を造ったんですね。そうしたらエリザベス女王に、真っ先に来ていただいて「何かお手伝いすることはないですか」と言われて、「僕はこの庭を日本に持って帰りたい」と、「プレゼントしてくれ」と(言ったんです)。そうしたら「OK」ということで、この庭を羽田空港に永久展示することになりまして。第1ターミナルのJALの11番から14番乗り場のところにオアシスみたいな庭があるんです。東北の風景っていうと桜とかになりますが、室内だから植えられない。イギリスから建材は持ってきましたが、絶対、日本の植物にこだわりたかったので、観葉植物にしようと。そこで(日本の)観葉植物を探したら、鹿児島に指宿って(温泉が)あるんですが、そこに地熱で温室を作るところがあって。そこの観葉植物で東北の風景を表現しました。地熱で水を温めて温室を温めるので、観葉植物がローコストで作れるんですよ。

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ジョージ:
指宿の海岸で砂風呂に入ったの覚えてて、裸で入ってて。そしたら農家のおばちゃんたちが来て、ゆで卵を始めて、あがりたいんだけど、あがれなかった。

石原:
だから砂風呂で成長されて(笑)。

麻耶:
ちょっと(体型が)卵っぽい(笑)。



母を想いながら造った奇跡の泉

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「恵の丘(長崎原爆ホーム)」という原爆で被ばくされた方が入る老人ホームが長崎にありまして。僕の母親もそこで20年寝たきりでしたが、29くらいのときに、母親が亡くなったんです。だから母親は僕が庭師になったことを知らないし、何もしてあげられなかったのですが、(その母が暮らした老人ホームの)方から遺言で「自分のお金を石原さんにあげて庭造ってくれ」っていう依頼があって。これはもう、やらなぁいかんと燃えて、2012年くらいに庭を造りました。フランスに(ローマ法王庁が”奇跡”として認定した) 「ルルドの泉」があるんですが、奇跡かどうかは別として滝を造って。桜をちょっと植えて、ツツジ植えて、ツバキとか日本の基本的な植物で1年中花が咲くように、(旧約聖書の『創世記』に登場する理想郷で楽園の代名詞である)「エデン」をイメージしました。



宮古島を“花の島”に変える

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僕は「宮古島大使」なんです。宮古島は海(の魅力)で人はたくさん来るんですが、台風のときとか、やることがない。そこで僕は、宮古島を1年中、花が咲く“花の島”にしよう、花のパラダイスにしようと植物園を造りました。
(台風については)勉強しました。基本的にはガジュマルとか地元の木を植えたんです、根っこが横に伸びるもの。背が高いと風を受けてダメですね、高かったら低くしてあげる。壁を造って、その下に低い植物を植えると(守られて)元気になる。

宮古島はフラットだから滝がなくて、小川しか見たことない。そこで滝を造ったんですよ、ド~ン、ド~ン、ド~ン、滝ド~ンと造って、そこに、せせらぎをイメージして(庭造りを)。それに、石垣があって低い屋根(の家)があってという、昔の風景も造ったんですね

(海の思い出は)長崎なので、とにかく何かあったらいつも海。最初のデートはやっぱりバイクで、「僕のバイクに乗らないか」とか言って。ほとんど振られちゃうんですけど。最初にデートしたときに、後ろに彼女じゃないけど、彼女になるかなって(いう人を)乗せるじゃないですか。そこであんまりブレーキかけなくていいのに、ちょっとブレーキかけちゃったりして。そういう思い出があります。



盆栽作りのアドバイス

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盆栽は、ジョージさんが言ったように基本は山で掘ってくるものだと思うんですよ。山でギリギリいっぱい死にかけてるけど元気な感じの植物を掘ってきて植え替えて。根っこはでかいからパワーが残ってるんです。そこから出た植物を使って、自分でどこかの岸壁にギリギリいっぱいに出てるようにイメージしながらカットする。右から風が吹いてくるから、葉っぱは左側だけ、とか。決まりはないんです。僕はもう風景盆栽、自分のオリジナルで、あのとき見たあの景色、あそこに木があったな、っていうのをイメーして自分のなかでテーマを(見つける)と楽しい。



本当にほしいモノだけを買う

(これからの夢は)僕はいま、生まれた街、長崎に庭を造っていまして、来春オープンしたいと思っているんです。(庭園外の風景を背景として取り込む)借景とかを使って街を庭にする、古い家も庭にする。借景ですから、住まなくなった古い家では、家の中から桜の木を植えて、家そのまんまをアートにしていく。長崎の、(実家の)牛小屋があったところにいま造っています。ワクワクしますが、病気ですね、“庭病”。

(暮らしのなかで大切にしていることは)モノを買うときに、ついつい買っちゃいますが、(そうではなくて)ドキドキしたら買う、迷ったら買わないと。道具なんかも最初、いっぱい買うんですよ。でも結局使わないんです。だから、ご飯をちょっと食べなくてもお金貯めて、本当にほしいモノを買うと。そういう風に僕はやっていきたいと思います。



前編はこちらへ⇒「海浜くらしの研究所」Vol.23 石原和幸さん(前編)