3月 17, 2019

「海浜くらしの研究所」Vol.20 荻上直子さん(後編)

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簡単に海に行けるっていうのが、やっぱり千葉の魅力。海が大好きだから、海の近くの両親の家をよく訪れる。
「海浜くらしの研究所」Vol.20 荻上直子さん(映画監督)


さまざまなジャンルで活躍するライフデザインの達人たちを迎えて、どんなくらしが自分を楽しく、豊かにしてくれるのかを研究する「海浜くらしの研究所」。その第20回目のゲストは、千葉県ご出身の映画監督である荻上直子さん。今日は荻上さんに、映画のほかに、くらしについても、いろいろお話しいただきました。



写真からいつの間にか監督の道へ

(映画監督を目指したのは)千葉大学で写真の勉強をしていまして、そこから映像に興味が広がって、どうせ勉強するならアメリカの世界で一番と言われているところで勉強しようと思って、南カリフォルニア大学(大学院)に行って映画を勉強したのが始まりです。

海外の生活を経験したことがなく、大学院に入る前に英語学校に通ったんです。でも、英語学校って英語がしゃべれない人しか入ってこないから、実際に(南カリフォルニア大学大学院)映画学科に入ったときは、当たり前ですけどアメリカ人に囲まれて本当に分からなかったです。全くついていけなくて、先生が何を言ってるかも分からなくて、一人いた女の子に、ずっと「何? 何? 何?」って頼っていたら、「Did I owe you something?」って「私あなたに貸しがあったかしら?」って言われちゃったんです。もうショックで「あんたにはもう二度と訊かない」と思って。でも、そのときゲイの男の子とかがいて助けてくれたんです。 (その子は)ドキュメンタリーのプロデューサーになったんですが、それくらい困っている人に優しくする余裕がないと、たぶん映画監督とか映画プロデューサーにはなれないんじゃないかと思います。必死に自分だけ、いい成績取ろうとするような人は、映画業界にいないと思う。

(学ぶ内容は)最初から何もかも全部です。脚本、カメラ、編集、監督。脚本を書くのも英語で書かないといけないから、誰かにチェックしてもらったり。日本では、工学部で理系だったので、高校生くらいからは文章を書かなくていいんですね。それで「さあ脚本書け」って言われても「何もできません」って思っていたんですが、本当にアメリカの授業ってすごく合理的にできていて、選ばれたいい先生から「こうやって、こうやって、やれば書けるんだよ」って本当に手取り足取り教えてもらっている間に、セメスター(学期)一つ終わるとちゃんと自分の作品ができあがってる、っていうのが、すごいところだなと思いました。私はカメラが好きで行ったんですが、脚本の授業に出合って、だんだん書けるようになって、脚本が書けるようになってから、監督になりたいなと思いました。



周りの力でさらに作品がよくなる

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(監督の仕事は)優秀なスタッフさんを集めると、脚本にのっとって「これですか?」「これですか?」っていろいろ提供してくださるんですよね。それに対して「そうだ」とか「違う」とか、そういう判断をどんどんしていく作業という気がします。役者さんに対しても、芝居に「そうです」とか「そうじゃないです」っていう判断をしていく作業が監督なのかなと思います。

私は脚本を自分で書いていて自分の頭のなかだけで想像しているのですが、それがスタッフとかキャストの人たちの力で違うものに、さらにいいものになってきたりするのが面白いところだと思います。

「力の抜ける笑いがある」と言っていただきましたが、劇場でお客さまに笑ってもらうと、すごくうれしいです。でも、ここで笑わせて帰してやろう、とかってやるとダメで、たいてい失敗します。何か自然に出てこないとダメなんですよね。それが難しいところで。
(作品の空気感は)ある程度やっぱり脚本に書いてあって、「ここで間」とか、そういうのは書いておきます。(長回しは)結構ありますね、ただ「これがいい」って思える瞬間にたどり着くまで時間がかかります。俳優さんはプロだから、(台詞を間違えたりとかは)あまりないです。ちゃんと頭にたたき込んで芝居をしてくださいます。

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ジョージ:
次は僕、映画出たいなぁ。

麻耶:
どんな役がいいですかね、ジョージさん、もし出るんだったら。

荻上:
昔は博士だったけど、いまは川辺に住んでいらっしゃるホームレスの方とか。

ジョージ:
それいい! そういうの、僕やりたい。


(今後の作品のテーマは)2012年に双子の娘を出産して、自分が年をとってきたのもあって、目につく話題が社会のちょっと嫌だなと思うところだったりするんです。貧困問題とか、社会的な問題に目が向いている気がします。



千葉で生まれ、千葉で学ぶ

(煮詰まったときのリフレッシュ法は)たいがいお風呂ですね、銭湯に行ったりとか、温泉も行きますし。リフレッシュするとまた違うアイデアが生まれます。
(海の近くのくらしは)大学が千葉大で、車を持ってる男の子が「海、行こう」って言って、無駄に浜辺を走ったりとか、無駄に砂浜に「LOVE」って書いたりとかしていました。いまでも海に行くのは好きです。

(出身地の千葉の魅力も)やっぱり簡単に海に行ける、っていうことですね。両親の家が勝浦にあって、子供と一緒にたびたび訪れて、凧揚げしたりとかしています。いいところですね。作品にも海は結構な頻度で出てきます。海に行くと、たいていのことは絵になるんですよね。

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(くらしのなかで一番大切にしていることは)双子の娘がまだ小さいので、一生懸命、子供みたいに遊ぶことを大切にしています。一卵性の双子なので細胞自体は同じはずなのに、一人は夫に似てやさしくて、一人は私に似て自己主張が強くて激しくアグレッシブな感じで。こうまで性格が違うかっていうくらい、違って。魂っていったいどこから来るんだろう、ってすごく不思議に思っています。



前編はこちらへ⇒「海浜くらしの研究所」Vol.19 荻上直子さん(前編)